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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)69号 判決

控訴人 原告 宮川安朝

訴訟代理人 藤田馨 外三名

被控訴人 被告 渡辺亘 外一〇名

訴訟代理人 新野慶次郎 外三名

主文

原判決を取消す。

控訴人の本訴を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実

控訴人は原判決を取消す、被控訴人等が昭和二十五年十一月五日山梨県東八代郡芦川村村議会においてなした議長渡辺亘の選任及び同村村長宮川安朝不信任の議決は存在しないことを確認する。との判決を求めると申立て、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の供述は原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

証拠として、控訴人は甲第一ないし十号証を提出し、原審における証人宮川政朝、霜村泰公、町田豊子及び控訴人本人の供述を援用し、乙第二、三号証の成立は不知、その余の乙号諸証の成立を認め、乙第一号証の一ないし十を利益に援用し、被控訴人等は乙第一号証の一ないし十、第二ないし五号証を提出し、原審における証人小林恒作、被控訴人等各本人渡辺亘、野沢市郎、市川国治、宮川雅義、市川角平、霜村丑太郎、霜村甲子保、飯高林及び丸山卯十の各供述を援用し、甲第四、八号証の成立を認める、その余の甲号諸証の成立は不知と述べた。

理由

本訴の要旨は「被控訴人等が昭和二十五年十一月五日山梨県東八代郡芦川村村議会においてなした議長渡辺亘の選任及び同村村長宮川安朝不信任の議決は存在しないことを確認する」にある。即ち被控訴人等が個人としてなしたる集合的の意思表示の不存在確認を求めるものではなく、被控訴人等が村会議員としてなしたる地方議会における議決の不存在確認を求めるものであり地方議会は地方公共団体の意思機関であるから、地方議会の議決の不存在確認の訴を提起するには、地方自治法第百七十六条に該当する場合には地方議会を被告とするか、かかる規定のない場合には地方公共団体を被告としてその意思機関である地方議会の議決の不存在の確認を求めることを必要とし、地方公共団体の議決に参与した個人を被告としてその意思表示の不存在確認の訴を提起することを得ないものといわなければならない。しからば控訴人の本訴は個人たる被控訴人等を被告として提起せられたものであるから不適法として却下せらるべきものである。原判決はこれと異る見解に立ち、控訴人の提起にかかる本訴を却下することなく、本案について審理判決をしたのは失当であるから、原判決を取消し、本訴を却下すべきものとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条、第九十六条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長判事 斎藤直一 判事 山口嘉夫 判事 猪俣幸一)

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